カッ(갓) 朝鮮の笠

カッ(갓) 朝鮮の笠

朝鮮王朝が舞台の韓国時代劇には欠かせないアイテムのカッ(갓)
日本語の「かさ」と語源が同じだと言われています。
漢字の笠は当て字で、カッ(갓)という言葉は朝鮮の固有語です。
基本的には、日差しや雨を避けるための実用的な道具で、それに権威性を持たせたものです。


起源は三国時代にまでさかのぼりますが、官職者が正式に利用するようになったのは、高麗末期・恭愍王(コンミンワン:)16年(1367年)のことです。
高麗はこれ以前の約100年間、中国の元王朝の支配を色濃く受けていました。

辮髪と胡服というモンゴル式の髪型と服装も甘受していたため、元の支配が弱まると同時に、高麗風の本来の衣服をとりもどし、カッ(갓)の着用も規定しました。
この流れを朝鮮も継承しました。


ところで、カッ(갓)という言葉ですが、広義には単に笠を表します。
竹でざっくり編んでいるものも、両班(ヤンバン)がかぶっているも総じてカッ(갓)なのです。
狭義には両班(ヤンバン)がかぶっている黒笠(フクリプ:흑립)をさします。黒笠は仕上げに漆を使うことから漆笠(チルリプ:칠립)ともいいます。


fukrip2.jpg

写真は重要無形文化財4号に指定されているカシル(갓일:笠仕事)の職人の一人で、4代130年続く笠子匠(イプジャジャン:입자장)朴昌栄(パク・チャンヨン:박창영)氏。
慶尚北道醴泉郡という笠の産地出身だった彼は、減り続ける需要を打開するため、1978年にソウルへ出てきてKBSに飛び込み営業をかけました。

そこで時代劇に採用され、現在ではほとんどの史劇で使われています。
ペ・ヨンジュン主演映画スキャンダルでも彼の作品が採用されました。
現在では彼の息子ヒョンバク氏が5代目として、ともに笠仕事(カシル:갓일)に従事しており、2010年に総理大臣賞を受賞するなど、後継の名に恥じない域に達しています。(チャンヨン氏にとっては息子はまだまだだそうですが:笑)

彼を唯一の職人とNHKでは紹介していますが、カッ(갓)関連の無形文化財に認定されている人は6名います。彼の息子や他の継承者もいるので、少なくとも10数名の継承者がおり、決して最後の一人というわけではありません。

ただ、カッ(갓)を作るには、帽子部分・つば部分(ヤンデ:양태)・両方をあわせ成形するという3工程があり、そのすべての工程ができる唯一の人という意味か、各パーツをつなぎ合わせ成形する仕事ができる唯一の人という意味で「唯一」とされているのかもしれません。(韓国でも唯一という表現が使われています。おそらく前者)


素材は帽子部分は馬の毛で編まれており、ツバは髪の毛のように細くした竹で編まれています。
どのサイトを見ても、髪の毛より細いという表現がされていますが、ちょっと韓国的表現かなと思います(笑)
成形には絹糸が使用され、最後に漆を塗って出来上がります。


kakkun.jpg

そして、多くの人が気になるのは、ジャラジャラとぶら下がっている装飾品ではないでしょうか?
これはカッのヒモカックン(갓끈)の一種でクスルカックン(구슬 갓끈)です。要するに玉のヒモ。珠纓の字が当てられています。

通常カックン(갓끈)は黒いヒモで、あご下で結びます。
装飾系のクスルカックン(구슬 갓끈)は水晶系などの天然石やメノウ・珊瑚・琥珀などを使いました。
竹や木・木の実なども利用されることもあったようです。


ちなみに写真のクスルカックン(구슬 갓끈)はあの柳成龍(ユ・ソンニョン)のものです。
彼については韓国の歴史にまとめていますのでご覧ください。

柳成龍(ユ・ソンニョン:유성룡) リュ・シウォンのご先祖様


まだまだ書き足りないことが多いのですが、今後、韓国の歴史のほうにまとめます。
いつになるのやら・・・(笑)

テーマ : 韓国ドラマ
ジャンル : テレビ・ラジオ



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さくさく先生、ありがとうございました!

いつも勉強になる、さくさくさんのブログですが、
今日のは本当に勉強になりました!
漆が塗られていたとは…想像もしませんでした。
そして全て絹糸だとばかり思っていたのが
馬の毛と細く割いた竹だったとは…!
本当にビックリです。
作る工程をぜひ見てみたいです!
「職人さんが唯一人」と聞いて驚いていましたが、
もう少しいたのでほっとしました。…でも少ないですよね~。
やはり技術と時間を要するものなんでしょうね…。
どこの国も伝統工芸は後継者問題が深刻ですね。
パク氏は息子さんが継いでいてひと安心ですね。
韓国の象徴とも言うべきものなので、
誇りと関心を持って、大事にしていってほしいです。
「カッ」は、身分によってツバの広さも違うし、
「クスルカックン」の素材も身分によって違いますよね、確か。
おもしろい文化だと思います。

さくさくさん、詳しく調べてくださって本当にありがとうございました。
これからもよろしく!

それと「日本の時代劇は素晴らしい」という話も、正直驚きました。
負けちゃいなかったんですね(笑)
最近の大河ドラマも、何か若者に媚びているようで、
つまらなく(龍馬はおもしろかったけど)感じていたのですが…
きっとそれは何か別な所に原因があるのでしょう(笑)
中途半端な知識ではなく、ちゃんと勉強していると
もっと違う目線で見られて楽しめるんですね!

カッは笠に通づるとは

今日は日曜日、トンイの放送日なので朝からワクワクしています。
そして、サクサク先生のカッの話を読んで、朝からフムフムとなるほど~と感嘆しています。
今夜の放送では、カッに目がくぎ付けになりそうです。
クスルカックンというのですね、あの装飾品は。
博物館などで古い時代の装飾品を見るのが好きなので、気になっていました。
身分や財力を示すものでもあるのでしょうが、
男性ならではの装飾ですね。
昨夜、料理番組でリュ・シウォン氏を見たところだったので、
余計に柳成龍氏がリアルに感じられました。
柳氏の祖先も子孫も、形は違っても日本と縁があるとは、
不思議な感じがします。

サクサク先生、ありがとう~!!

詳細で解りやすい情報をありがとうございます!!やはり後継者の問題等あるようですが、実際に作っているところを見てみたいです。今夜のトンイを録画し損ね、後でゆっくり見ようと用事をしながら横目で見ていた私は、今、ショック状態です。ああああ~っ(泣泣泣) ※チョンス兄さんがトンイを抱き寄せたシーンを見られてよかったのが救いです。

アブナイアブナイ

韓国流「ただ一人」に騙されるところでした。いやぁ、さくさくさんの情報量は素晴らしい!クスルカックンの素材や並べ方にもやっぱり官位や場面毎に色々と決まり事があったということは、取っ替えひっかえしてたんでしょうか?そんなにたくさん持ってたのかなぁ?
今、気になってるのはカックンの結び方。必ず片蝶結び(?)の輪が向かって左にきていますが、あれもオッコルムの結び方とか和服の打合せのように(死者は左前みたいな)何か決まりがあったのでしょうか?日本人には普通に蝶結びや本結びでも良さそうに思えますが、必ず左片蝶結び(仮)なのですごく気になって。(どうでもいい?)あと中殿の裾の刺繍の幅が拡がって派手になったのも、何か演出上意味があるのかなと勘繰っている今日この頃です。

Re: さくさく先生、ありがとうございました!

日韓の歴史ドラマについて、今度記事を書いてみたいと思います。
色々なブログを見ても、けっこう勘違いしている人が多いんですよね~。

> いつも勉強になる、さくさくさんのブログですが、
> 今日のは本当に勉強になりました!
> 漆が塗られていたとは…想像もしませんでした。
> そして全て絹糸だとばかり思っていたのが
> 馬の毛と細く割いた竹だったとは…!
> 本当にビックリです。
> 作る工程をぜひ見てみたいです!
> 「職人さんが唯一人」と聞いて驚いていましたが、
> もう少しいたのでほっとしました。…でも少ないですよね~。
> やはり技術と時間を要するものなんでしょうね…。
> どこの国も伝統工芸は後継者問題が深刻ですね。
> パク氏は息子さんが継いでいてひと安心ですね。
> 韓国の象徴とも言うべきものなので、
> 誇りと関心を持って、大事にしていってほしいです。
> 「カッ」は、身分によってツバの広さも違うし、
> 「クスルカックン」の素材も身分によって違いますよね、確か。
> おもしろい文化だと思います。
>
> さくさくさん、詳しく調べてくださって本当にありがとうございました。
> これからもよろしく!
>
> それと「日本の時代劇は素晴らしい」という話も、正直驚きました。
> 負けちゃいなかったんですね(笑)
> 最近の大河ドラマも、何か若者に媚びているようで、
> つまらなく(龍馬はおもしろかったけど)感じていたのですが…
> きっとそれは何か別な所に原因があるのでしょう(笑)
> 中途半端な知識ではなく、ちゃんと勉強していると
> もっと違う目線で見られて楽しめるんですね!

Re: カッは笠に通づるとは

女性はノリゲが差の見せ所ですもんね!
何れにしても天然石の価値が、今よりは高かったのでしょうね~。

> 今日は日曜日、トンイの放送日なので朝からワクワクしています。
> そして、サクサク先生のカッの話を読んで、朝からフムフムとなるほど~と感嘆しています。
> 今夜の放送では、カッに目がくぎ付けになりそうです。
> クスルカックンというのですね、あの装飾品は。
> 博物館などで古い時代の装飾品を見るのが好きなので、気になっていました。
> 身分や財力を示すものでもあるのでしょうが、
> 男性ならではの装飾ですね。
> 昨夜、料理番組でリュ・シウォン氏を見たところだったので、
> 余計に柳成龍氏がリアルに感じられました。
> 柳氏の祖先も子孫も、形は違っても日本と縁があるとは、
> 不思議な感じがします。

Re: サクサク先生、ありがとう~!!

ハングルをNAVERで検索すると、動画が出てきますよ~。
おためしあれ~!

> 詳細で解りやすい情報をありがとうございます!!やはり後継者の問題等あるようですが、実際に作っているところを見てみたいです。今夜のトンイを録画し損ね、後でゆっくり見ようと用事をしながら横目で見ていた私は、今、ショック状態です。ああああ~っ(泣泣泣) ※チョンス兄さんがトンイを抱き寄せたシーンを見られてよかったのが救いです。

Re: アブナイアブナイ

もともと朝鮮の人はツングース系遊牧騎馬民族といわれていて、服の特徴もそれに由来していると言われています。右側に結びがあると弓を使うときに不都合がありますよね?ボクは弓をやっていたのでよくわかります。だから、左側だけに結びをつくったのではないかなと類推します。
もともと服に男女差はさほどなかった頃に、このような習慣が定着したのではないのでしょうか?
その他のドラマ上の衣類については、時代考証が全くないといっていいので、突っ込みだすとキリがなくて・・・。今回のカッも粛宗の時代はもっと小さいんですよ~。

> 韓国流「ただ一人」に騙されるところでした。いやぁ、さくさくさんの情報量は素晴らしい!クスルカックンの素材や並べ方にもやっぱり官位や場面毎に色々と決まり事があったということは、取っ替えひっかえしてたんでしょうか?そんなにたくさん持ってたのかなぁ?
> 今、気になってるのはカックンの結び方。必ず片蝶結び(?)の輪が向かって左にきていますが、あれもオッコルムの結び方とか和服の打合せのように(死者は左前みたいな)何か決まりがあったのでしょうか?日本人には普通に蝶結びや本結びでも良さそうに思えますが、必ず左片蝶結び(仮)なのですごく気になって。(どうでもいい?)あと中殿の裾の刺繍の幅が拡がって派手になったのも、何か演出上意味があるのかなと勘繰っている今日この頃です。

流石

弓を使う時のことまでは、考え及びませんよ、そうか遊牧民族か、納得。さくさくさんはやはり凄い。トゥングース族ってなんか懐かしい響きです。つられて契丹とか突厥とか女真とか匈奴とか記憶の彼方から舞い戻って来ました(笑)続いてアーリア人とかゲルマン民族とかウラルアルタイ語までわらわらと。ちゃんと世界史勉強しとくんでした。漢字語がわからないせいで琥珀が南瓜になっちゃう人のこと、とやかく言えません(汗)「カッ」が小さかったというのは、天辺が低いのではなくて、ツバの部分の幅が狭かったという意味ですよね?

Re: 流石

はい、円盤部分です!

> 弓を使う時のことまでは、考え及びませんよ、そうか遊牧民族か、納得。さくさくさんはやはり凄い。トゥングース族ってなんか懐かしい響きです。つられて契丹とか突厥とか女真とか匈奴とか記憶の彼方から舞い戻って来ました(笑)続いてアーリア人とかゲルマン民族とかウラルアルタイ語までわらわらと。ちゃんと世界史勉強しとくんでした。漢字語がわからないせいで琥珀が南瓜になっちゃう人のこと、とやかく言えません(汗)「カッ」が小さかったというのは、天辺が低いのではなくて、ツバの部分の幅が狭かったという意味ですよね?
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プロフィール

さくさく

Author:さくさく
本業はアジアを駆け巡る旅人で、アジアン雑貨のネットショップオーナーです。
タイにはしょっちゅう行くのですが、実は韓国へは一度しか行ったことがありません(笑)

数えたことはありませんが、週に20時間、累計100本以上の韓国ドラマを見ていると思います。
ここ数年は、20話程度のミニシリーズではもの足りず、大河ドラマ(時代劇)や150話程度の日々ドラマにはまっています。

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