宋時烈(ソン・シヨル) トンイに出てこない儒学の大家

宋時烈(ソン・シヨル:송시열)は残念ながらトンイには出てこない儒学の大家で、粛宗(スクチョン:숙종)の御代では最も有名な臣下です。
イ・ビョンフン監督が彼を登場させなかったのは、ストーリーが複雑になりすぎるからなのでしょうが、本来、彼抜きにはこの時代を語ることはできません。


実は、宿題として承っている「儒教」について、どのように説明すべきか迷っています。
本気でやりだすと大変な量になってしまいますし、かといって端折るとわけがわからないでしょうし。
ですので、彼の人生を借りて各論的に2つのことを説明します。
今回はその一つ大義名分論です。



大義名分(テウィミョンブン:대의명분)

ドラマでも、儒者が事あるごとに「名分(ミョンブン:명분)がなければ行動できない」と言っていますよね?
名分とは、「儒者として当然ながら守るべき道理」とでも言っておきましょう。
両班は皆が儒者なので、ことさらこの名分を大事にします。

これを皆が守っていれば争いなんて起きないはずなのですが、解釈が異なることによって、猛烈な争いが起きます。
西人(ソイン)と南人(ナミン)の派閥党争も、つまるところ儒教の解釈論の違いだったりします。
この解釈論の違いについての面白い例がありますので、次回紹介します。


さて、そんな名分に大義なんてついたもんだからさあ大変。
実はこの大義名分は宋時烈(ソン・シヨル)が言いだしっぺではなく、朝鮮王朝が採用している朱子学の祖・朱子(朱熹)によるものです。
朱子は南宋の儒者で、これまでうまくまとまっていなかった儒学を体系的にまとめ上げた儒学中興の祖です。

実は朱子と宋時烈(ソン・シヨル)には、大局的に相似した環境に身を置いているという偶然がありました。
朱子は南宋の人と前述しましたが、宋という国は北夷(北の多民族)からの攻撃に再三晒されて、後年には北半分を女真族の金に明け渡し、南半分だけで王朝を維持していました。

宋時烈(ソン・シヨル)のいた朝鮮はと言うと、1592~1598年までは日本による攻撃で大打撃を受けたあと、今度は北から女真族が打ち立てた中国王朝の清に攻撃を受け漢城は陥落、第16代仁祖(インジョ:인조)は、頭を地面に打ち付けつつ血を流しながら土下座して許しを請い、最終的に臣下の礼をとりました。1637年1月30日のことですから粛宗が即位するわずか37年前のことです。

この三田渡の恥辱(삼전도의 치욕)の際、王だった仁祖(インジョ)の息子、第17代孝宗(ヒョジョン:효종)は宋時烈(ソン・シヨル)とともに北伐を推進しようと画策しました。
これはもちろん、宋時烈(ソン・シヨル)の案を採用したものです。
宗主国だった明を滅ぼした清を打ちのめすという大義と名分がそこにはあったわけです。


戦後に壊滅的打撃を受けた日本が、戦勝国アメリカに刃を向けるようなものです。
それだけのダメージを受けていて北伐を提唱する儒者の名分至上主義は、現実を直視せず原理原則にのみ従う悪しき慣習でした。
もちろん、現実的に不可能であるため、実行されませんでした。


関連:日本人がびっくりする同姓だと結婚出来ないという韓国特有の不娶同姓は「韓国歴史」宋時烈(ソン・シヨル)と不娶同姓にまとめています。

テーマ : 韓国ドラマ
ジャンル : テレビ・ラジオ



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ありがとう!

簡潔で解りやすい御回答に感謝です!

大義名分ばかりを掲げると現実が見えなくなり、判断を誤る。…ホント、そうですよね。それに命を賭けるのですから、し烈な世界ですね。日本の侍世界にも通じるものがありますね。

もうウン十年前、高校生の頃、韓国では同姓婚はできないことを知ったのですが、その時は「何で!?」と驚きました。最初から結婚の選択肢が狭くなるし、えらく縛りのキツイことだなあと思った記憶があります。儒教の影響だっんですね。納得できました。

Re: ありがとう!

どういたしまして~!

今でも同性同本だと親戚のような感覚はあるようですよ!


> 簡潔で解りやすい御回答に感謝です!
>
> 大義名分ばかりを掲げると現実が見えなくなり、判断を誤る。…ホント、そうですよね。それに命を賭けるのですから、し烈な世界ですね。日本の侍世界にも通じるものがありますね。
>
> もうウン十年前、高校生の頃、韓国では同姓婚はできないことを知ったのですが、その時は「何で!?」と驚きました。最初から結婚の選択肢が狭くなるし、えらく縛りのキツイことだなあと思った記憶があります。儒教の影響だっんですね。納得できました。
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本業はアジアを駆け巡る旅人で、アジアン雑貨のネットショップオーナーです。
タイにはしょっちゅう行くのですが、実は韓国へは一度しか行ったことがありません(笑)

数えたことはありませんが、週に20時間、累計100本以上の韓国ドラマを見ていると思います。
ここ数年は、20話程度のミニシリーズではもの足りず、大河ドラマ(時代劇)や150話程度の日々ドラマにはまっています。

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